[HOME]

[書評一覧]

 

『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』

(著者: 北村 慶)

 

「投資本」の実態

 世の中に金融本・投資本は腐るほどありますが、あえて「人に奨めたい」と思うほどのものはそう多くありません。

「株でン億円作る」などと安直に煽っているものは論外ですが、一見良心的なスタイルで、ある程度の真実を伝えていると思われる書籍であっても、著者について調べてみると何やら怪しげな団体とかかわりがあったり、よからぬ噂があったりすることが多いからです。

とりわけ、「金融コンサルタント」と称する人たちがいわゆる富裕層の人々に向けて書いたものはその傾向が強いようで、その手の書籍の可否は、内容の良し悪しだけでは判断できません。そういう著者にとって、著書とは純粋に読者に知識・情報を提供するものというよりはむしろ一種のマーケティングのツール、すなわち、「読者を顧客として囲い込むための撒き餌のようなもの」であって、著者は、印税収入を得ることよりも、読者の一部が、コンサルタントとしての著者に資金の運用等を任せることに期待しているからです。

このような書籍は、仮に内容にある程度の信頼性があっても、その著者のかかわっているビジネスの信頼度まで含めて評価できなくては推奨することは難しいでしょう。しかし、書籍の内容が良いことと、著者やそのビジネスに信頼性があることとは全く別の問題なのです。

著者を信頼した結果、どんなことが起こるかは予想がつきませんし、書評家がそれに責任をとれるわけもないので、金融本・投資本の推奨は気が進まないことが多いのです。

 

 

例外的な好著

 その点、『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』の著者である北村慶氏には、巷の金融本・投資本の著者に見られる種類の商売気がほとんど感じられません。奥付の経歴欄にはただ「大手グローバル金融機関勤務」とだけ記されており、書籍を見る限りでは、読者を顧客にして「印税以外の利益」、すなわち、会費、相談料、コンサルティング料、運用手数料などを得ようとは意図していないように見受けられます。

おそらく北村氏が勤務する「大手グローバル金融機関」(とりわけ、もしそれが外資系であるなら)から得られる収入に比べれば、書籍の印税はごくわずかでしょうから、経済的な執筆動機という点で疑問がないわけではありませんが、現在のところは、純粋に「金融ビジネス作家」として、書籍の内容だけで勝負しているという印象があります(これは単に印象にすぎませんので、あるいは間違っているかも知れませんが・・・)

これは、金融・投資本の著者としては、例外的な好感度であると言ってもいいかも知れません。

 

本質的な点を凝縮

それだけに内容は良心的であり、出し惜しみがありません。良書と言うべき金融・投資本のなかから「本質的な点」だけを一冊に凝縮した感があり、しかも論理的に、分かりやすく書かれています。本書を「最初の投資本」として手にされた方はまさに幸運であると言うべきでしょう。書店に並んでいる凡百の投資本を読むために費やす時間とおカネが節約できるだけでなく、有象無象の自称コンサルタントたちの発する雑音を聞かなくても済むからです。投資について迷ったときは、本書を再読して内容を確認すればほぼ事足りるのであって、忙しい一般投資家にとって、まさに「投資についてはこの一冊のみ」と言っても過言ではありません。

実際に手にとってパラパラと見てみると、グラフや式があったりしてやや取っ付きにくい印象があるかも知れませんが、心配は要りません。著者の主張は至極シンプルです。

いくつか引用してみましょう。

 

     「戦後、日本で当たり前のように行なわれて来た、「ローンで住宅を買い、そしてそれが資産のほとんどを占めるようなポートフォリオを(結果として)組む」という行為は、資産形成の理論からすれば避けるべき投資行動ということになるのです。」(p. 200)

 

「大切なことは、いかなる局面にあっても、投資を継続することです。例えば、「国内債券3万円・国内株式1万円」と決めたら、その金額を毎月変えないことです。

相場の下落は買いのコストを下げる「チャンス」であるそう強く信じ、目先の相場や情報に迷わない。余計なことは何もしない”—。それが大切なのです。」(p. 225)

 

 この他にも、「国内株式に比べると、外国株式の方がリスクの割にリターンが高い」、「持ち家派は賃貸派に比べておよそ1000万円余分に支払うことになる」など、投資初心者にとっては目から鱗の情報が詰まっています。

 

 

プライベートバンクと投資顧問の違い

 ただし、あえて苦言を呈すれば、北村氏の「プライベートバンク」に関する理解は、やや生半可です(これは、その業界に身を置いていない著者にとっては致し方のないことかも知れませんが、「ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ知恵」という副題が付いていることを思えば、ちょっと残念です)。正確には、プライベートバンクとは、規模は大小さまざまですが、「投資顧問会社」ではなくあくまで銀行であり、貸付業務よりも資産運用に重点を置いているという意味で投資顧問業者と共通する面があるというだけです。ですから、銀行でなければ「プライベートバンク」とは言いませんし、逆に、銀行でない単なる投資顧問をプライベートバンクとかプライベートバンカーなどと呼ぶことは誤解を招くもととなりますので、するべきではありません。

 もっとも、本書の趣旨にとってプライベートバンクの定義はさほど重要ではなく、これで本書の価値が損なわれるというものではありません。ただ、最近は、銀行とは何の関係もない単なるコンサルタントが「プライベートバンカー」と自称して、本を出したりセミナーを開いたりしており、誤解と混乱が拡大する傾向がありますので、神経質にならざるを得ないのです。ちなみに、自称「プライベートバンカー」の著書などは、その内容の可否にかかわらず、冒頭で述べた「推奨しにくい本」の典型例と言えるでしょう。

 

「純粋な作家」であり続けられるか

 おそらく、北村氏がここまではっきりと、良心的に、一般投資家にとって役立つ情報を提供できるのは、「自称プライベートバンカー」や「自称金融コンサルタント」などと異なり、読者に対して、「顧客になってほしい」などという余計な下心がないからでしょう(単なる想像ですが、北村氏が勤務する「大手グローバル金融機関」とは、外資系の、個人投資家とは直接かかわりのない業務を主に行なっているところではないかという気がします)。書評家としては、今後も北村氏の著書に注目するとともに、氏が将来にわたって純粋な「金融ビジネス作家」として、巷の金融本・投資本の著者と一線を画するスタンスをとり続けられるかどうか、大いに興味がわくところです。

 

 北村 慶氏の著書一覧

 

 

書籍『誰も知らない 投資信託の秘密

 

     プライベートバンキングに関するご相談、スイスのプライベートバンクのご紹介を一切無料で承っております。詳しくは、こちらをご覧下さい。

 

 

投資信託からプライベートバンクへ金融・投資先進国での「顧客還元」

[HOME] [サイトマップ] [投資信託特集] [金融のからくりと罠]

 

 Affiliate Links

  Swiss Bank Directory, List of UK and other private banks

  Swiss Bank Account, Private Banking Account for Free