「複利効果のない」資産運用なんて

 

複利の不思議

 アルバート・アインシュタインは、「複利」について、「人類最大の数学的発見」、「宇宙で最強の力」と言い、「(世界の7不思議に続く)8番目の不思議」と呼んだそうです。

 「複利」と言えば、小学生か中学生の頃に、「1日目に1円、2日目に2円、3日目に4円、4日目に8円・・・」というように倍々で貯金していくと、1ヵ月後には「1億円を超える」という結果に驚いたことを思い出します。単純な原理でありながら、通常の人間の感覚を超えた結果には、アインシュタインならずとも何か神秘的なものが感じられるかも知れません。

 倍々ゲームは「100%複利」ですが、その10分の1の「10%複利」の威力も相当なものです。仮に年利10%の複利で運用できる資金があったとすれば、1年後には1割増えるだけですが、複利の効果で7年後にはおよそ2倍となります。つまり約7年ごとに2倍となるわけですから、あとは上の例と同じように計算すれば、14年で4倍、21年で8倍、28年で16倍近くになります。これは長い年月のように思われるかも知れませんが、「複利の効果」さえあれば、ほったらかしておいても「100万円が1600万円」、「1000万円が16000万円」になるのですから、相当に凄いことです。

 

 

奪われた「資産形成の機会」

 考えてもみて下さい。年利10%の複利さえあるなら、子供が生まれたときに預金しておいた100万円が、その子が28歳になるときには1600万円になり、35歳のときには3200万円に、42歳で6400万円になっています。ほとんど何もしなくても、ちょっとした「資産家誕生」です。いや、半分の年利5%でも「42歳で3200万円」になっているのだから、結構いいではないですか。

 ところが、昨今の日本の低金利の現状は今さら言うまでもありません。預金が2倍になるために100年も1000年もかかるようでは、複利の効果の恩恵も何もありません。しかも、この実質的なゼロ金利が「銀行を救済するため」の処置であり、経済の状況からすれば「5%程度あってもおかしくなかった」というのですから驚きです。長年の低金利で「財産形成の機会を奪われた」ことに怒ったとしても、それはごく自然なことでしょう。

 低金利で救われた日本の金融機関は、せめてもの罪滅ぼしに、国民の資産形成について、より真剣に考えて取り組むべきではないでしょうか。

 

複利から単利へ

 ところが、実態はどうも逆のようです。

 低金利が続く日本では、「複利効果」を享受できる金融商品というのはファンド(投資信託)くらいしかありません。ところが、どうもファンドの世界に「異変」が生じているらしいのです。

 おそらく、その発端は、最近の「毎月(または隔月)分配」などの「分配金受取型ファンド」の流行にあるようです。

 言うまでもなく、複利効果は、運用によって得られた分を「再投資」するからこそ享受できるわけで、「分配金」として受け取ってしまえば、複利ではなく「単利」となってしまいます。

 「単利」というのは、先ほどの例で言えば、「1日目に1円、2日目に2円、3日目に3円・・・」という具合に増えるだけであって、1日あたりの利率100%であれば、1ヶ月後に得られる金額は30円です。複利で得られる「1億円」とは、何という違いでしょうか。

 「毎月(または隔月)分配ファンド」については、ある経済学者が「預金をただ取り崩しているようなものなのに、それに税金がかかり、高額の手数料も取られる」と評していますが、財産形成よりも「毎月分配がうれしい」というような理由で好む人がいることについては、個人の嗜好の問題なので、ここでとやかく言うつもりはありません。

 しかし、このような商品が現在流行しているからといって、「分配金受取型」のファンドばかりが幅を利かせる傾向があるのは、どうしても納得が行きません。

 

 

証券会社の都合か

 実は、最近(20062)、ある面白そうなファンドを見つけて、証券会社に資料を請求したところ、そこには、「この証券会社では、『分配金受取コース』のみを扱っています」という説明がありました。

 これまで述べたことからも明らかなように、「分配金再投資」でなければ、複利の効果はなく、財産形成への効果には雲泥の差があります。そこで、「分配金再投資コース」を扱っている証券会社はどこかと、ファンドを運用している投信会社に問い合わせてみたのです。

 答えは、驚くなかれ、このファンドを取り扱っている販売会社(銀行や証券会社)10社ほどあるが、「分配金再投資コースを扱っている会社は一つもない」というのです。

 「最近は、販売会社さんの意向で、『分配金再投資のファンド』というのはないんですよねえ、申し訳ないですけど・・・」

 もともと日本の金融機関には期待していないので、多少のことでは驚かないのですが、さすがに、これにはびっくり仰天してしまいました。1社くらいあっても良いじゃないですか、「複利効果」で顧客の財産形成を手伝おうとする証券会社が。

 「分配金受取」がはやっているからそれに集中したいというのも分かります。分配金を受け取った顧客が別の商品を買ってくれれば、それで手数料がまた稼げるという事情もあるでしょう。でも、そもそも「全く取り扱いがない」というのは何なのでしょうか。

 しかも、そのファンドの販促用資料(パンフレット)には、ファンドの運用成績を示すグラフとして「分配金を再投資したと仮定した」グラフが載っているのです(分配金落ちがあるので、現実に投資家が得られる利益とは異なるグラフです)

そのグラフは、「複利効果」のおかげで、見事な右肩上がりになっていました。

 

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