日本の投信評価は何故「3年」なのか? 

意図せざる(?)「数字のトリック」

 

 

「日本は3年」「海外は5年」の謎

 世の中には、「数字のトリック」というものがありますが、投資信託の評価会社による投信評価がそのようなものであるとは思いません。しかし、日本の投信評価が対象とする「過去3年間」のパフォーマンスについては、どうして3年なのか、かねてより疑問に思っていました。

 何故なら、欧米など、海外の投信評価は「過去5年間」のパフォーマンスを対象とするのが標準的であるからです。

 ちょっと考えてみれば分かることですが、投資信託の評価期間は、短い方が「投信会社」や「投信販売会社」にとって都合がいいはずです。何故なら、なるべく長く過去に遡らない方が、悪い運用成績の影響がデータに残らないからです。言い換えれば、評価期間を短くとれば、過去の運用成績が悪くても、その後持ち直すことによって、「成績の良いファンド」であるという印象を与えやすくなります。

 これに対して、評価期間が長い場合は、過去に一時的にせよ成績が悪化したことがあるなら、その記録はいつまでも残って平均の運用パフォーマンスを押し下げる要因となります。ファンドがその後、優れた成績を上げたとしても、それは相殺効果によって目立たなくなり、「平均的なファンド」か、場合によっては「平均以下」のファンドであるという印象を与えかねません。

 

「日本のファンドは成績が良い」(!?)

 すべてが「3年」か、すべてが「5年」で評価されるなら特に問題はないのですが、あるファンドが3年で評価され、別のファンドが5年で評価されるなら、「3年で評価されたファンドの方が成績が良く見える」可能性が高いと言えるのです。日本のファンド評価方式に慣れた人が海外のファンドを見ると「成績が悪く見える」という奇妙な現象も、そこに原因の一端があります。

 例えば、2005年末の時点でミューチュアル・ファンドや投資信託を評価する場合、5年前の2001年まで遡って運用成績を算出すれば、どうしても「ITバブル崩壊」によるマイナスの影響は避けられません。そのため、2003年以降の好成績にかかわらず、平均的なパフォーマンスは低くなります。ところが、評価期間を3年前までに限ると、「ITバブル崩壊」の影響はほとんどなく、平均的なパフォーマンスも高くなります。

しかも、投資の初心者ならずとも、データを見るときは「ITバブル崩壊」のことなどうっかり忘れていますから、どうしても「3年で評価される投資信託」の方がすぐれているような印象を受けるのです。

 

何故「国際標準」に合わせないのか?

 こう考えると、日本の投信評価の期間も国際標準に合わせて「5年」とした方が良いように思います。

しかし、これが今だに「3年」のままであるのは、日本の投資信託がきわめて短命だからです。欧米では「5年」をかけて投信を評価し、じっくり腰をすえて投資するのに、日本では「5年」もたてば投信の寿命が尽きるのも近くなり、今さら評価しても無意味だと思われてしまうのではないでしょうか。投信を販売する銀行、証券会社にしても、5年もたったファンドの販売には大して興味がありません。古いファンドよりも、新しく設定されたものの方が時流にも適って販売しやすいからでしょう。

 「投資信託は長期投資に適した商品」とは、投信販売会社のパンフレットなどに判で押したように必ず出てくる宣伝文句ですが、これが日本のいわゆる「長期投資」の実態であり、「投信評価期間3年」という数字は、そのことを象徴的に示していると言えるでしょう。

 

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