プライベート・バンカーは「何でも屋」ではない
ローマ法王御用達の病院にプライベート・ジェット機で送迎(??!!)
『週刊ダイヤモンド』(2006年1月26日号)に、「プライベートバンクが提供する驚愕のサービス」と題して、「ローマ法王御用達の病院にプライベート・ジェット機で送迎」、「スイスの寄宿学校へ子息を留学させる準備」などの「サービス」が紹介されています。また、別の本によれば、プライベート・バンカーには「結婚相手を紹介して欲しい」という依頼もあるとか。「顧客の要望すべてに応えるのがプライベート・バンカーの仕事」などという言葉まで引用されていて、あたかもプライベート・バンカーとは、「銀行家」ならぬ「高級便利屋」ではないかという印象さえ与えます。
しかし、ちょっと常識を働かせてみるなら、仮にも「銀行」であり、「銀行家」である者が、そのような「何でも屋」的なことを「業務」として行なうのは、ちょっとおかしいという気がします。想像するに、これらの記事は、実際にプライベート・バンカーに取材して書かれたものかも知れませんが、おそらく記者がPB(プライベート・バンキング)の世界を十分に理解することができず、自分が何となく想像できる「何でも屋」のイメージに引き付けて書いてしまったのではないかと思われます。
「富豪のサークル」に入る
プライベートバンクは、一般の銀行と異なり、少額の資金を受け入れないので、顧客の絶対数が少なくなり、顧客との関係がそれだけ密になります。さらに、バンカー自身が、日本のいわゆる御用聞き的な「銀行員」ではなく、良家の子女・子息なのであり、自らのファミリーを通じて富豪たちの間で「顔が利く」ということがあります。プライベートバンクの顧客は、このようなバンカーとの個人的な関係を通じて、時として富豪のサークルに入り、彼らの享受している一流の世界に触れる機会があるということは十分に考えられます。しかし、これは、プライベート・バンカーとの「個人的なよしみ」によって得られるという意味で決して「業務」として行われるものではなく、最近日本で流行している、俄仕込みの「富裕層ビジネス」とも全く異なっています。
プライベートバンクとは「銀行」である
改めて言うまでもありませんが、プライベートバンクとは「銀行」であり、プライベート・バンカーは「銀行家」です。従って、何と言っても「金融(資産の運用・保全、投資)」が業務の中心です(もし、現実に、上のようなことを「業務」として行なっていたなら、本末転倒もいいところでしょう。さらに、日本でこれを行なえば銀行法違反となる可能性もあります。シティバンクが日本でのプライベート・バンキングから撤退させられたのも、その関係でした)。上記の『週刊ダイヤモンド』の記事では、「日本の銀行は金融サービスが中心なので遅れている」というような書き方をしていますが、金融機関が金融サービスを中心に提供してはいけないなんて、そんな馬鹿げた話はないでしょう。日本の銀行が「遅れている」とすれば、それは金融サービスを中心に提供しているからではなくて、「遅れた金融サービス」を提供しているからに過ぎません。
同様にして、スイスのプライベートバンクが進んでいるのは、金融以外のサービスを提供しているからではなく、「進んだ金融サービス」を提供しているからです。そう書くと当たり前すぎて雑誌記事としては面白味に欠けるのかも知れませんが、事実は極めて単純であり、常識的なのだということです。
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投資信託からプライベートバンクへ—金融・投資先進国での「顧客還元」
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